相関電子と軌道自由度(基本法則から読み解く物理学最前線 22)

須藤 彰三 監修, 岡 真 監修, 石原 純夫 著

2,200円(税込)

共立出版

 超伝導、磁性、誘電性、熱現象などの物質が示す興味深い性質の多くは、互いに強く相互作用しあう天文学的な数の電子により引き起こされる。強相関電子と呼ばれるこれらの電子には、小さな磁石としての性質であるスピン自由度のほかに、電子がどの方向に運動するかという自由度が存在し、これは軌道自由度とよばれる。
 軌道自由度は、上記のような興味深い性質を裏から支える舞台や素材としての役割を果たしていると同時に、これ自身が新奇な量子多体現象をもたらす隠れた自由度として多くの注目を集めている。
 本書は、物理学・物理工学・化学・マテリアル工学などを専攻する学生から研究者までを対象とし、孤立イオンにおける電子軌道や電子格子相互作用などの基礎的な項目から、軌道秩序、軌道励起、これらを観測する共鳴X線散乱法や最近の軌道物理の話題まで解説しており、本分野の全体像を見渡すことができる。