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本書は、大人が子どもを育てる家庭や保育園といった制度の枠内で展開される多様な子育て活動を取り上げ、その対象としての当の子どもがそうした活動にどのように参加しているのかという問いを検討する。
活動対象としての子どもには、「無能」であるという前提が要請される。しかし、人間の知的な有能さを明らかにしてきた認知科学や近接する社会科学に立脚すれば、そうした子どもにおいてもある種の有能さを見いだせるだろう。実際、子育て活動の遂行とは、有能な子どもと大人による見事な協働作業なのである。
具体的に取り上げるのは、家庭での家族間会話、保育園での「ご挨拶」や「お誕生会」といった実践である。分析されるのは、どこにでもある、日常的な、子どもと大人による些細な相互行為だ。本書では、社会学における会話分析という方法論を採用し、人々の協働の具体的な姿を描き出す。同時に、心理学における文化歴史的アプローチから、そうした協働を可能にする諸条件やそこから生起する人々の精神発達を描くための理論的な見通しを与える。
子どもにとって、子育てとは何なのか?