心を知るための人工知能 ―認知科学としての記号創発ロボティクス―(越境する認知科学 5)

日本認知科学会 編, 谷口 忠大 著

3,740円(税込)

共立出版

子どもが概念を形成し、言葉を覚えていくように
ロボットが自ら学習し発達することができるのだろうか。
人工知能が人間の認知システムにおける学習と発達のダイナミクスをひも解く。

 認知発達し言語を獲得するロボットを作ることで人間の知能を理解しようとする学問である記号創発ロボティクス。それは人間の認知システムに対する構成論的アプローチである。本書はその記号創発ロボティクスの認知科学としての側面に焦点を当てた初めての本格的な入門書である。
 人間の認知とは固定的で静的な存在ではなく、環境との相互作用を通して変化する動的な存在である。では、人間の認知の動態を理解するためには、言語による記述的な認知の表現や、ある時期の人間の行動に焦点を当てた心理実験だけでは不十分ではないだろうか。真に「環境との相互作用を通して変化する動的な存在」を表現するためには、環境との相互作用を行う身体と、その情報をシステム内部で処理し、適応的に変化していくための知能が必要である。そのような議論は、必然的にロボットを人間の認知を理解するためのモデルとして活用しようという研究に導く。
 2010年代のディープラーニングに基づく人工知能の発展や、確率的生成モデルに基づく機械学習の発展を背景にしながら、認知科学を発展させていくモデル研究の新しく魅力的な旅路を紹介する。
 「心を知る」ことを望む、あらゆる学び手に届ける、新しい認知科学に向けた必読書。