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物質が「原子のつぶつぶ」から構成されているように、宇宙空間は「情報のつぶつぶ」から構成されているのではないか?このような考え方が、超弦理論と量子情報理論の境界領域から生まれ、理論物理学の最先端の話題となっています。情報のつぶつぶとは、「量子ビット」のことで、量子情報の最小単位を意味します。ミクロな世界の自然法則である量子論では、情報の在り方も、マクロな古典的な世界とは大きく異なります。その最たる理由がミクロな世界に特有な二体相関を意味する「量子エンタングルメント」の存在です。この本では、主に学部生レベルの物理の予備知識をもとに、この話題のエッセンスをひも解いていきます。
学部生の読者は、是非、まず第1章「本書のガイド」を最初に読んでいただき、話の流れをつかんで頂ければ全体が読みやすくなると思います。そこでは、初読の際に読み飛ばしてよい部分も提案しております。また巻末の用語解説もご活用ください。2章以降では、まずこの話題の基礎となる量子エンタングルメントやエンタングルメント・エントロピーの解説にかなりの紙面を割いています。その後で、最近の超弦理論の主たる研究テーマとなっているゲージ重力対応とそれを用いたエンタングルメント・エントロピーの計算を平易に解説します。その後で、エンタングルメント・ウェッジやブラックホール情報問題とアイランド公式、量子エンタングルメントからの時空の創発など、最新の話題にも触れており、理論物理学を研究する大学院生にとっても読みごたえがあるのではと思います。本書が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。