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本書は、サービス業および製造業にまたがる多くの産業において適用可能なレベニューマネジメント(収益管理、Revenue Management)のための理論と応用事例を網羅的に取り扱う初の邦書である。時々刻々に変化する需給関係と他社の価格情報に応じて価格を変動する近年注目のダイナミックプライシングについても詳しく取り上げる。
レベニューマネジメントの精神とも呼ぶべき基本的な考え方は、「適正な商品・サービスを、適正な価格・タイミングで、適正な消費者(客)に、適正な量を販売・生産する」ことである。このような販売方法と価格付けを可能とする商品・サービスは陳腐化商品としての共通の特性を備えている。航空機の座席やホテルの空室および電力などのように、供給量が短期的には限定された陳腐化商品はある時点以降は商品価値がなくなるという特性を持つ。
本書では、そのような商品・サービスの特性を産業ごとに具体的に述べ、レベニューマネジメントの基礎からダイナミックプライシングの最近の研究成果まで、応用事例やその問題点、実施に際しての注意点も踏まえて解説する。また、全く新しい応用事例として、欧米の類書でもほとんど取り上げていない感染症大流行時の感染症の数理モデルをレベニューマネジメントのモデルとして考察した(第8章)。そこでは社会距離を保つ政策を人と人との接触率の視点から分析し、さらに医療資源の配分問題をレベニューマネジメントの観点から論究している。第9章では、大規模な災害後の復興モデルおよびM&Aに関する評価を将来収益の交換という観点から論じている。