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現在記録されている約100万種の昆虫のうちの多くの種が、森林に依存している。森林と我々人間の生活がかかわりを持つように、森林に生息する昆虫に対しても、人間の活動は、程度の強弱はあるものの、直接的あるいは間接的にかかわりをもつ。
かかわり合いの形は、原因や影響のタイプによって、4つに整理することができ、本書における部と章の構成のもととなっている。1つめは、開発による生息地や生育地の改変、あるいは人間の乱獲による種の減少や絶滅であり、人間による過剰な利用、つまりは使いすぎを意味するためオーバーユースともよばれる(第1部の第1章と第2章)。2つめは、人間による手入れの不足によって里地里山などの生息地の質が変化することがあり、これは、人間による利用の低下、つまりは次第に使われなくなることを意味するため、アンダーユースともよばれる(第2部の第3章と第4章)。3つめは、外来生物や汚染物質などの人間が持ち込んだものによって引きおこされる生息地の変化があげられる(第3部の第5章と第6章)。そして4つめは、気温の上昇をはじめとする気候の変化の影響である(第4部の第7章)。さらにこれら4つが複合したかかわり合いの形も存在する(終章)。
こうした異なるかかわり合いの視点から、本書では、森林や樹木に依存している昆虫への影響について解説していくことを試みた。多くの場合、以上の要因とその影響は、昆虫にとっての危機として扱われるかもしれない。一方で、各要因や関連事項を科学的にうまくとらえ、昆虫との関係性を明らかにすれば、森林の昆虫の多様性や種の保全や管理にとって、大きなチャンスともなりえる。