木版画 伝統技法とその意匠

竹中 健司 著, 米原 有二 著

4,400円(税込)

誠文堂新光社

「木版印刷」とは、木の板に刃物で凹凸をつくり、そこに色を付けて文字や図像を紙に写す技法です。
日本では浮世絵に代表される多色摺りによって、版数を重ねて色彩を組み合わせる技法が発展してきました。
また、出版・印刷物の歴史として、人間の生活とともに受け継がれてきた伝統工芸であり、いわば人間の生活史といえます。

機械印刷が主流になったいまでも、その木版印刷ならではの独特の風合いは紙にかかわるデザイナーやアーティストら多くの人を魅了し、さまざまな印刷物や作品に採用されています。

本書は、京都の老舗「竹中木版 竹笹堂」による、彫り、摺りを中心とした技術を丁寧な解説とともに紹介するとともに、江戸時代の浮世絵からはじまり現代の木版プリントまで、老舗ならではの貴重な資料を豊富に用いながら、日本の「木版印刷」の歴史をひもときます。

資料価値の高い内容でありながら、数々の図版と美しいビジュアルで、美術、工芸関係者はもちろん、若手作家やアーティストの参考になる一冊になっています。

■目次
木版印刷とは
はじめに

第1章 木版印刷の歴史
1-木版印刷の誕生
2-出版産業の勃興
3-浮世絵の登場
4-浮世絵の最盛期
5-京の木版画、江戸の木版画
6-近代の木版画 商業と芸術

第2章 木版印刷の仕事
版元とともに歩んできた木版画
1-浮世絵
2-染色図案
3-巨匠たちの名画
商業印刷としての木版画
4-掛紙・短冊・便箋
5-京うちわ
6-初釜の扇子
7-寺社の縁起物
8-絵柄・文様・タイポグラフィ
9-手摺りの雑貨

第3章 木版画の制作技法
赤富士に見る、木版画の技法
絵師・彫師・摺師の協業について

彫師の技法
摺師の技法

『冨嶽三十六景 凱風快晴』を彫る 版木四版七度摺り
『冨嶽三十六景 凱風快晴』を摺る 順序摺り

摺りの技法を知る
ぼかしの技法
彫師・摺師が手入れする道具

第4章 現代木版画の意匠

第5章 これからの木版画
先人に学び、現代に求められる制作を続けることが、技術を更新する
国宝『孔雀明王像』を摺る―世界最大級の複製木版画への挑戦
フランスに渡った浮世絵版木―フランス国立図書館収蔵品の調査
日本印刷文化史上、最も美しい版本の復元事業―「嵯峨本謡本」にみる職人技術の極み

クリエイターとコラボレーション 現在のデザインで広がる可能性 内田喜基×カンバラクニエ×竹中健司

竹中木版 竹笹堂について
資料提供協力先/参考文献
おわりに

コラム
1 明朝体のルーツとなった日本で最初の『一切経』開版事業―宝蔵院
2 木版印刷の「版元」が担う役割とは―芸艸堂が受け継ぐ版木と伝統
3 古版木は「歴史の証人」だ―虎屋所蔵の版木から商業印刷としての役割がみえる
4 木版画を支える、職人を訪ねて 越前和紙 岩野市兵衛 和紙の里を訪ねて