気軽に導入・利用可能な、シンプルかつ低コストな遠隔医療システム/株式会社三勢[全6頁]

映像情報メディカル 編

500円(税込)

産業開発機構株式会社

昨今、通信技術の発達、診療保険点数制度の改訂に伴い、医療機関向けの遠隔医療システム運用サービスを提供する会社が増加してきている。しかし、現在、普及してきている遠隔医療システムは、定常的な薬処方を必要とする患者の来院の手間を省き、患者に利便性を提供するための一種の「患者サービス」として位置づけられているに過ぎない。実質的には電話で済ませることができるレベルの簡易な行為を、法律を遵守するために遠隔でのビデオ対面状況を作為的に作り出し、「数分程度の診断行為」を行うことで薬処方を行っているに過ぎない。
「遠隔医療」とは名ばかりで、本質的な意味での遠隔医療行為には程遠い。遠隔医療行為にとっての最大のリスクは「直接に対面せずモニタ越しで診断することによる診断クオリティの低下」である。過去においては、診療保険点数が認められていなかったことに加えて、診断ミスのリスクが大きく、遠隔医療行為がなかなか普及しなかった。1990年代から2000年初頭にかけて、大学、大手総合施設において遠隔医療システムの実証実験が数多く行われたが、その検証項目の大半がリアルタイムの遠隔ビデオ画像による診断レベルの検証であった。実証実験では、患者の容態を高精細なビデオ画像で遠隔地のプロフェッショナルな医師に伝達することが可能だと判断されたが、実験に使われた仕組みはコスト的、機材設置場所のスペースにおいて、一般の医療機関には負担が大
きく、容易に導入できるものではなかった。それに加えて、保険診療報酬の観点からも遠隔診断が認可されていなかったことも、遠隔医療の普及が進まなかった大きな理由の1つであった。現時点でも、難易度が高い症例を抱えている患者をビデオ画像のみで確定診断することは非常にリスクが高く、積極的に遠隔医療サービスの導入を進めている医療施設は少ない。既述のように、遠隔医療システムサービスを活用している施設では、診断ミスの可能性が低い花粉症、避妊ピルの処方等、万が一の急変のリスクが非常に低い限定的な症例が対象である場合が大半だと言えよう。