内視鏡画像診断支援ソフトウェア「EndoBRAIN」の開発経緯/工藤進英[全4頁]

映像情報メディカル 編

500円(税込)

産業開発機構株式会社

大腸内視鏡は、大腸癌/前癌病変の早期発見・治療にとどまらず、大腸癌死亡を抑制する点においても疫学的に有効性が高いことが実証されつつある。すなわち、Nishiharaらは、大規模コホート研究データを解析し、大腸内視鏡が介入することで約70%の大腸癌死が抑制されうることを報告、ZauberらはNational Polyp Studyにおいて大腸ポリープを全摘除することで、大腸癌死が約50%に減らせることを示唆した。このようなデータに基づき、米国をはじめとする一部の国・地域では大腸内視鏡検査を大腸がんスクリーニング検査と位置づけ積極的に実施している。この際、欧米のガイドラインでは発見された病変について腫瘍/非腫瘍の内視鏡診断(=optical biopsy)を適切に行い、腫瘍のみを摘除することが推奨されている。しかしながら、臨床現場では上述のニーズが完全に満たせていないのが現実である。すなわち、ポリープの見落としは20%程度あるのは既知の事実となっており4)、見つけたポリープの内視鏡診断の精度も不十分である。たとえば、2013年に米国で行われた大規模な多施設前向き試験ではnarrowbandimaging(NBI:Olympus Corp. Tokyo)を用いた大腸ポリープの腫瘍/非腫瘍の診断において90%以上の精度を実現できたのは全医師のたった4分の1にすぎないという結果がそれを示している。近年の内視鏡イメージング技術の飛躍的発展とは裏腹に、高精度の内視鏡診断はエキスパート内視鏡医に限られるというジレンマが依然として残っている。このような状況を打開し、医師の能力によらない均てん化された内視鏡診断を実現するために、人工知能(AI:Artifi cial intelligence)を用いた診断支援システム(CAD:Computer-aided diagnosis)の研究が始まった。本稿では、筆者らのグループが現在研究を進めている超拡大内視鏡「Endocyto(Olympus Co.)」を用いたCADである「EndoBRAIN」の開発経緯および薬機法承認までのロードマップを紹介する。