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ダニエル・H・フット 編, 濱野 亮 編, 太田 勝造 編
◆広範な研究領域における最新の研究成果を一挙に収載◆
― <はしがき>より抜粋 ―
本書は,書名『法の経験的社会科学の確立に向けて』が示すように,守備範囲と方法論の点で非常に広大な学問領域である「法社会学(sociology of law;socio-legal studies)」ないし「法と社会研究(law and society)」の中で,経験的研究(empirical studies)と呼ぶべき領域の研究を中心として編集されている.
経験的社会科学としての法社会学は自然科学に近い.すなわち,自然現象を説明するための理論モデルを構築し,その理論から検証可能な仮説を導き,実験によって仮説と現実世界とを照らし合わせて検証してゆく自然科学と同様の方法を用いる.法の経験的社会科学では,法と社会の相互作用について理論とモデルを構築し,その理論やモデルから検証可能な仮説を導き,データとエヴィデンスによって仮説と現実の人間社会とを照らし合わせて検証してゆく.そして,検証結果をフィードバックして,仮説,そして理論とモデルを彫琢してゆく.
とはいえ,本書の諸論考を見れば分かるように,法の経験的社会科学の具体的方法は様々である.理論とモデルの抽象度は千差万別であり,仮説の具体性も多様であり,検証の手法も様々である.データやエヴィデンスとしても,多種多様な諸学問分野の研究機関や調査機関が収集する既存データはもとより,面接調査の結果,社会調査の結果,実験結果など,法社会学研究者によるオリジナルなデータ蒐集がなされている.収集データやエヴィデンスに対する分析方法としても,統計学的分析をはじめ,ネットワーク分析,会話分析,エスノメソドロジーなど,多種多様な分析手法が駆使されている.本書には,そうした経験的社会科学の立場に立つ,それぞれのテーマ・問題領域における最新の研究成果を集めている.