漁業・資源の情報処理システムの方策を展望 / 適正な資源管理の基となる資源量および生物学的許容漁獲量の推定法の確立が問われる現在,音響的手段・工学的手法などを青木一郎・斉藤誠一氏らが紹介・解説。
はじめに
漁業は,広い海洋において,その変化に対応しつつ再生産し,分布・移動する天然の魚類を対象とした生産活動である.漁業活動や資源管理がグローバル化する現在,漁業や資源に関する情報を的確に収集し,解析する技術の高度化は極めて重要になっている.
平成 8 年 7 月に「国連海洋法条約」の批准にともない関連国内法が施行され,平成 9 年 1 月より魚種毎に漁獲の上限を定める漁獲可能量(TAC)制度が導入され,サンマ,マイワシ,マアジ,スケトウダラ,マサバ・ゴマサバおよびズワイガニの 6 魚種が TAC 対象魚種に指定された.さらに,平成 10 年 1 月からはスルメイカにも TAC が設定され漁獲量の管理が行われている.このため,TAC の管理のために漁獲管理情報システムや漁船の行動や位置情報をリアルタイムに収集・処理するシステムの構築が図られている.
人工衛星を利用した通信・計測技術などの発展はめざましく,リモートセンシングやバイオテレメトリーの手法が漁業,資源管理分野でも応用されている.NOAA 衛星の海面水温画像による漁況の解析は,OCTS 衛星海色画像を併用することにより,さらに精度の向上が図られつつある.また,人工衛星を利用したテレメトリーの研究は大型海産生物の行動を中心にますます発展しつつある.
コンピュータによる情報処理技術は地理情報システム(GIS)の水産分野への応用,漁獲量のデータベース化と収集過程のネットワーク化として利用されている.さらに,資源管理における意思決定過程に情報の処理・解析結果の支援が図られている.また,ニューラルネットやファジィシステムといった手法が新しく漁業や資源管理に導入されつつある.
このような状況において,水産における情報の役割・意義およびコンピュータ情報処理技術を総括し,今後のこの分野における研究の発展と漁業・資源情報システムの方策を展望することを目的として,「漁業と資源の情報学」と題するシンポジウムを平成
11 年 4 月 1 日,日本水産学会主催により東京水産大学において下記の通り開催した.
(以下略)