米軍提督と太平洋戦争

谷光太郎

1,280円(税込)

Panda Publishing

■太平洋戦争を戦った、米海軍の主要なリーダーを紹介する1冊。

嫌われ者の天才――キング
処世術に長けた調整型――ニミッツ
平凡とされながら実戦で結果を残した――スプルーアンス
知られざる名将――ミッチャー
期待はずれとされた有望株――フレッチャー

“本当の太平洋戦争”を理解するためには、日本軍だけではなく、米海軍と米海軍の主要リーダーたちを知る必要がある。

リーダーたちの経歴・戦歴から、知られざる人物像、エピソード、軍内部での人間関係までを詳しく取り上げる。

■実は混沌としていた米海軍

一見、余裕があったように思われることもある米海軍だが、内情は苦しく混沌としていた。
また軍内部での人間関係も複雑怪奇で、軋轢も多かったことがわかる。

日本海軍と同じく、海戦の主力が戦艦から航空艦隊に移り変わる時代で、その綱引きも軍内部を複雑にしていた。

本書では、人事から見た航空艦隊の成長の歴史や、同じく急成長を遂げた海兵隊や、潜水艦部隊、インテリジェンス機関のリーダー、そして参謀職の人物も取り上げる。

■例
――フランクリン・ルーズベルト
大戦期の急成長を遂げた米海軍にとって、ルーズベルト一族の影響は極めて大きい。とくにフランクリン・ルーズベルトは抜群の国民的人気を得る一方、複雑な性格で直言した人間をけして許さず、彼の意を汲んで動くリーヒやスタークなどを重用する一面もあった。

――アーネスト・キング
部下のニミッツやハルゼーほど知られていないが、アーネスト・キングは制服組のトップとして合衆国艦隊を指導した人物。人間的にはあくが強く、上からも下からも嫌われていたが、彼の能力に疑問をもつ者はいなかったとされる。
ドイツを優先する戦略に異を唱え、戦力を太平洋にも割くことを主張した。彼がいなければ、日本の太平洋戦争は違ったものになったかもしれまない。

――ロバート・ゴームリー
平時では優秀とされたが、食料や武器の補給もままならず、負傷者ばかりでまともに戦えない状況では、前に進めない者たちもいた。混沌としていたガダルカナルでは、消極的と判断されて更迭された。

――レイモンド・スプルーアンス
兵学校の成績や普段の仕事ぶりは地味で平凡だったが、混沌とした戦時には力を発揮した。与えられた任務をこなして出世し、ニミッツの下で第五艦隊を率いた。

■目次
第1章 大統領と海軍長官
ルーズベルト一族と米海軍
フランクリン・ルーズベルト大統領
ノックス海軍長官
フォレスタル海軍長官

第2章 ワシントンとハワイの最高司令部指揮官
リーヒ統合参謀長会議議長
スターク海軍作戦部長
キング合衆国艦隊司令長官兼海軍作戦部長
ニミッツ太平洋艦隊司令官
タワーズ太平洋艦隊副司令官
《コラム》統合参謀長会議とそのメンバー

第3章 大戦初期前線指揮官
ゴームリー南太平洋艦隊司令官
フレッチャー航空艦隊司令官
ハート アジア艦隊司令官

第4章 大戦後期前線指揮官
ハルゼー第三艦隊司令官
スプルーアンス第五艦隊司令官
《コラム》ハルゼーとスプルーアンス比較
キンケイド第七艦隊司令官
ターナー上陸軍司令官

第5章 航空艦隊の指揮官
海軍航空艦隊の誕生と発展
ミッチャー航空艦隊司令官
スプラーグ航空戦隊司令官
高速空母部隊指揮官の変遷
《コラム》高速空母艦隊の参謀と艦長
《コラム》エセックス級空母
《コラム》グラマン戦闘機とグラマン社
《コラム》グラマン社と三菱航空機

第6章 潜水艦の指揮官
ロックウード潜水艦隊司令官
《コラム》潜水艦艦長列伝

第7章 海軍主要参謀
合衆国艦隊・海軍作戦部・太平洋艦隊の参謀
レイトン情報参謀を中心とする情報将校

第8章 海兵隊指揮官
海兵隊の三将軍
《コラム》海兵隊の戦力・組織

参考文献――より深い興味を持つ人々への読書アドバイス

■著者略歴
谷光 太郎(たにみつ・たろう)
 
1941年香川県に生まれる。1963年東北大学法学部卒業、三菱電機株式会社入社。1994年同社退社、山口大学経済学部教授。2004年、大阪成蹊大学現代経営情報学部教授。2011年同校退職。
著書に、『海軍戦略家キングと太平洋戦争』『海軍戦略家 マハン』(共に中央公論新社)、『敗北の理由』(ダイヤモンド社)、『青色発光ダイオードは誰のものか』(日刊工業新聞社)、『ロジスティクスから見た「失敗の本質」』『日本陸海軍はなぜロジスティクスを軽視したのか』(小社)、訳書に『統合軍参謀マニュアル』(白桃書房)など多数。