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『漫勉』は、倉本とでなければ実現不可能だった。
――浦沢直樹 (『浦沢直樹の漫勉』MC、『20世紀少年』『BILLY BAT』著者)
倉本美津留は『突然ガバチョ』の現場からテレビの世界に入った。放送作家として『夜はクネクネ』『EXテレビ』など伝説の番組を世に出し、やがて東京に進出した倉本は『ダウンタウンのごっつええ感じ』『伊東家の食卓』『M‐1グランプリ』『シャキーン!』『漫勉』など数々の人気番組を手がけ、大阪のアバンギャルドな笑いが全国区になった時代の原動力のひとりとなった。
田中文夫、かわら長介ら伝説のテレビマン。一緒に番組を作った戦友たち。笑い飯、浦沢直樹、園子温、板尾創路、Chim↑Pomという盟友。そして家族と友人。
多くの証言をもとに、「アイディアの芽を摘まない」「どんな提案も企画に育てていく」倉本のクリエーションの原点に迫る。
◆『オシムの言葉』などスポーツや民族問題を中心に執筆してきたノンフィクション作家、木村元彦がはじめてテレビの世界に挑む野心作!
――私自身はコソボやボスニア、旧ユーゴスラビアの民族紛争や臓器密売などの戦争犯罪を主にルポしてきた書き手である。テレビについては門外漢なのは百も承知で小さなためらいはあった。それでも、故山口瞳は「隠れたファインプレーを書くことがジャーナリストの使命」という至言を残した。「ぽんごん」を数少ない例外として裏方ゆえにめったに表には出てこないが、人知れず自分の仕事の先に世界の平和を乱すようなことがあってはいけないと考えながら、そしてたとえ自分たちがちょっとずつ不幸になっても未来に思いやりをもたなあかんと思いながら、高視聴率番組を手がけてきた男がいる。このファインプレーを見逃してはいけない。同時に下取材を開始すると倉本美津留を描くことは奇抜な発想やアイデアの出し方、テレビがもっと元気だったころの自由な時代を伝えることになると気がついた。
(木村元彦「野暮なプロローグ」より)