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日下部辰真(くさかべたつま)は89歳、まもなく人生の終わりを迎えようと病院のベッドで横たわる男性です。いよいよ心臓の鼓動も弱まってきたとき、彼の閉じた瞳の中で走馬灯のように過去の思い出が流れ始めました。その影絵さながらの景色の中に、若かりし頃に恋をした女性の姿を見つけてしまいます。当時の彼には勇気がなく、胸に秘めた思いは明かせぬまま。その後別の男性と結婚した彼女は、結婚生活に疲れ、若くしてこの世を去ってしまったのでした。せめて走馬灯の中でだけでも彼女を幸せにできないか。そう願った瞬間、彼は次元の壁を乗り越えます。現実世界の命が尽きるまでの限られた時間ながら、走馬灯の中で彼女との再会を果たしたのです。ところが、歴史を塗り替えるのは容易ではありません。果たして彼は、現実世界の心臓がその役目を終えるまでに最期の願いを叶えることができるのでしょうか。