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「あ、待ってください。ネクタイ曲がってますよ」共同生活中の家出少女、麻友(まゆ)は、俺がせっかく締めたネクタイの結び目を指でほどき、整えた。「えへへ、こうやってるとまるで新婚さんみたいですね」「お、おまえが曲げたんじゃねーか!」俺、比良克樹(ひらかつき)は就職活動を始めていた。紆余曲折がありながらも、麻友との生活は俺たちを変えていた。いまは生きる目的がある。生きたいと思う理由がある。ところが、そんな俺たちの前に二度と出会うことはないだろうと思っていた男──かつて妻子を捨てて女と逃げた俺の親父が現われた。――俺たちは、都合のいい人形なんかじゃない。肉親との過去の因縁から卒業するため、俺たちが選んだ道は……?